沖縄復帰50周年に想う

沖縄に最初に行ったのは中学生の時でした。故郷のイベントで参加させていただきましたが、故笹川良一さんと、のち政治家になった方の講演があり、40年以上過ぎた今でも話の内容を覚えています。

当時の沖縄はまだアメリカ色が濃く残っていました。海洋博覧会場の前のビーチで30分程度泳がせてもらいましたが、初めてみるエメラルドグリーンの海に、皆「バスクリンのようだね」と感激し遊びました。島内観光も一通りあり戦争について考える機会もいただいた、中学生にとっては大変有意義なイベントでした。

その後沖縄を訪れたのは社会人になってからでした。趣味のダイビングでほぼ毎年行くようになり、コロナ禍になるまで、本島と離島に足を運び続けました。

私にとっての沖縄は、中学時代の昭和を思い出させる懐かしい場所であり、観光地でしかない場所なのですが、最大の魅力は、静かに、ひたすらぼーっとできる地であるということです。仕事など一切関係なく、ビールを片手に、浜辺で半裸状態でひたすら寝ることができる、国内で唯一の場所です。東京に戻って「いい感じに黒くなったね」と言われることに若干の喜びを見出せる、ささやかな楽しみを得られる場所に過ぎません。

 

沖縄は様々な問題を抱えている地であることは皆知るところです。
沖縄にもっとホテルを作り、大々的な観光地にする、結果県民所得もあがるからなどどいう話が出てきておりますが、私はこの考えには以前から懐疑的で、反対です。


近年の沖縄は、観光客で随分と騒がしくなってきていることから、コロナで行けなかったことも手伝って、最近は群馬や長野の温泉旅館にいっています。こちらの方が人も少ないし、サービスがいきとどいているから良いかも知れないと感じ、沖縄でなくてもそれなりに満足できるようになりました。


沖縄の人は、真っ黒に日焼けした変な、単なる観光客である私に対しては、仲良くなると本音を語ってくれることがあります。

近年の(コロナ直前の)観光客の多さには辟易しており、例えば、最近できた外資系ホテルで働いていたが、アジア系の外国人の多さとマナーの悪さ、騒がしさに耐えられなくなり、今のホテルに転職した。日本人がほとんどで、静かに丁寧に接客できるので本当によかった。などの話を聞いたことがあります。
他にもいろいろ聞きました。

利害関係が全くない状態で、長い期間をかけて、静かに耳を澄ませば、いろんな声を聴くことができるものです。


観光公害という言葉があります。かつてタイやマレーシア、シンガポールの観光地を旅した時、最近では京都に行った時、擦れた観光地を見て、なんとなくこの言葉の持つ意味がわかりました(京都批判ではございません。美しい日本の宝を保持してほしいから書いただけです)。
ペナン島、プーケット島、サムイ島、ランカウイ島は、美しいビーチを簡単に見ることができなくなっています。プーケット島などは、外国語の看板が乱立した感じの、擦れた島となり、美しいビーチを持つリゾートホテルは、プーケットから高速ボートで1時間ほどかけないといけないような状況になっています。ホテルができるとその前のビーチは、泳げはしますが決して島本来の美しさを保持できるビーチではなくなります。東京近郊のビーチとさほど変わらない透明度や透視度のビーチとなってしまいます。


そして地元の人はそのビーチに行くことはなくなります。彼らの楽しみがなくなるのです。

 

沖縄の自然を利用し、開発し、観光地としてホテルを作り、といういわゆる箱モノを作って目先の利益を追い求めるやり方については、昭和の時代に作られた有名な観光地の中に、いまは廃墟となっているものがあることから、考えさせられることがあります。東京近郊でもそのような地のホテルを見ることがあります。

いわゆるお仕着せ箱モノ、やりっぱなしの政策は、問題があったと言えるのかも知れません。

考えようによっては、かけがえのない沖縄の豊かな自然を、目先の雇用確保のためという名のもとに、外国人に切り売りする行為とも言えます。

沖縄の芸術、芸能文化は、沖縄の豊かな自然に根ざして発展してきました。これは日本の宝であり、例えば奈良、京都、他の地と同様に位置付けられるものです。この貴重な財産を、外国人に売り渡すようなものです。

 

安全保障上も大きな問題があるように思えます。観光地の撹乱工作など比較的楽に行えるでしょう。フロントラインに大規模な観光地があることの国防上の危うさは、容易に想像できます。

 

そもそも日本人は観光業をすることが好きなのでしょうか。たまたま民度が高く他人に配慮でき、治安のよい地に住む日本人は、おもてなしという言葉に一種の救いを求めているのかもしれません。好き(向いている)かどうかは別の話です。
また詳しく調査したことはありませんが、一般的にホテルスタッフの給与は大変安いという話を聞いたことがあります。沖縄県民の一人当たり所得を上げることになるのでしょうか。

 

私は学術都市や付加価値の高い産業を誘致する地になればいいと考えています。時間もお金も手間もかかりますが、将来を考えるとこれが最も良い気がします。東京の大学のキャンパスをいくつか沖縄に誘致し、短期間でもそこで学ぶ環境にすることができれば、また、F15の爆音を聞きながら沖縄の普段の生活を若い人が知ることができれば、さらに地元沖縄の若者たちもそこで学ぶことができれば、彼らが社会人になった後、真に沖縄のために貢献できる人材となりえます。

また、現在半導体の生産工場が九州にできると報道されていますが、半導体に限らず、高付加価値産業を、沖縄の地で行うことができれば、美しい自然の中で、仕事をしたいと考えている人たちにとっては、大いに魅力ある就職先になることでしょう。当然、地元沖縄の人の就職先にもなりえます。
自然と学問、高度な産業を並立した魅力ある地。
日本の、沖縄以外の地で普通に検討、実現されていることを、沖縄でも検討し、実現してほしい。


目先の利益でなく50年後を見据えた、ごく当たり前であるしかし、大きな政策を実現したい、と考える人たちならば、私は心から応援します。


 

もう50年経ちました。
時が経つのは本当に早いものです。