安い人材の流出



日本の人件費を海外諸国並の水準に上げるべきだという話を7年くらい前にとある席でしたところ、韓国が当時、インフレで大変な状況にあると一蹴されたことが有りますが、現在起きている議論は全く逆のものになっています。

日本の人件費や、下請け中小企業の収入はどのような状況かと言いますと、進行形であるのかもしれませんが、ほとんど、変化がないように思えます。給与が増えたという話はほとんど聞こえてきません。弊社はちっぽけな税理士事務所ですが、それでも、今回の確定申告においては、ほとんど値上げをしましたし、インボイス制度が導入される今秋には、法人のお客様も、昨今の状況に合わせ、値上げする予定でおります。また人件費については、徐々にアップしている状況です。
でも周囲からはほとんど何も聞こえてきません。

日本の人件費が安いから、倍にして雇用してもいいと考える外国法人は当然あるのでしょうし、そのような動きがあることは、この10年の間に、特に中国関係ビジネスにおいて良く聞きました。同じ仕事をやるにしても、中国だと1ケタ違うからと、1回くらいは中国の仕事を受けてみる、といった感じで、携わった会社は、私のちっぽけな事務所のお客様でも結構見られました。もっとも、全てがうまくいったわけではなかったようで、様々なことから、その後手掛けなかった人が多かったようです。当時、中国ビジネスに詳しいシンクタンクの方から、いきなり法改正がおき、行政指針が変化し、そのたびに、賄賂的な支出を迫られることが当たり前であるのが中国だと聞きました。そんな付き合いにくい国とはちょっと と考えるのが普通ですが、現在どのような状況なのか定かではありません。
話がそれましたが、いずれにしても、海外諸国と比較して、日本の人件費が安いとされる傾向は、円安も作用して今後しばらく続くことでしょうから、状況を静観していきたいと思います。ただ、人件費を上げることで、上げることについてこれない企業は淘汰されていきますし、税理士報酬を払えない企業もでてくるかもしれません。しかし、このような議論がこれまで日本であまり起きてこなかったことは事実であり、この状態を「ゆでガエル」であると自嘲してきた方々を私は見てきました。
現在の議論に
私は賛成、のうえで、状況を静観していきます。


また話をそらしますが、先日セキュリティ業務に携わる人の人件費が、海外では高額であると知りましたが、当たり前のことだと思います。そうでないと、情報流失につながるのは明白なことです。


少し話が変わりますが、日本のエネルギー開発を民間企業主体で進めることには賛成なのですが、企業は将来もうけが出てその分人件費として社員に還元する見通しが立って、初めてそのビジネスに投資しようとするのですから、それまでの間は、ある程度の補助なり助成を国がしっかり補償した形で進めないと、ただでさえ大変なエネルギー技術開発は進められないと考えます。割に合わないビジネスに、頑張って投資しようとする企業などあり得ません。
しかし、戦前、例えば日本軍の航空機開発技術は世界レベルであったことを考えると、本気になって、国が後押ししてやれば、できないことは無いように思えます。もっとも資源補給を断たれた日本は、生産力に影響し、米軍に対抗できる布陣を持つことはできなかったわけですが(米国との圧倒的国力差の問題で、論点がまたずれてしまいました)。
ただ、技術力においては、日本は当時、世界一であったことは言うまでもありません。

そういえば、台湾が半導体を自国資源と位置づけ、生産力を大幅に高める投資を決定したことを以前書きましたが、大切なことは、こういうことではないかと思います。

日本も、海外諸国と上手に付き合いながら、どういう自国資源に積極的に投資すべきかの旗振りを行うべきではないかと。
昨今の地政学的リスクを考えると、待ったなしではないのかなと、思っているのは私だけなのでしょうか。


ただ、こんなことを軽々に言えるのは、私が、平凡で普通に過ごせているからかもしれません。




国のために必死になって戦っておられる方々に、敬意を表したいと思います。